ハラスメント対策は企業経営の最重要課題です
~6つの行為と7つの対策手順から考える、安心・安全な職場づくり~
「最近、ハラスメントが問題になっているらしいが、うちの会社には関係ない」。
もしそう思っているとしたら、それは大きなリスクです。ハラスメントはどの職場にも起こり得る問題であり、未然に防ぐことが企業の信頼や生産性を守るうえで欠かせません。
この記事では、企業経営者・人事担当者向けに、ハラスメントの基本的な定義と、具体的な対策手順を解説します。

■ ハラスメントの6つの定義
厚生労働省では、職場でのパワーハラスメント(以下パワハラ)を、次の6つの行為として定義しています。これらはすべて、職場において「優越的な関係を背景とした言動」であり、業務の適正な範囲を超えるものです。
① 暴行・傷害など身体的な攻撃
上司が部下に対して手を出す、物を投げる、胸ぐらをつかむなど、直接的な暴力行為はもちろん、脅すような姿勢や威圧的な接近も該当します。
② 脅迫・侮辱・暴言など精神的な攻撃
「辞めてしまえ」「お前は無能だ」などの人格否定的な言葉や、長時間の叱責、脅し、過度なプレッシャーをかける言動が精神的な攻撃とされます。
③ 隔離・仲間外し・無視などの人間関係からの切り離し
一人だけ会議に呼ばれない、話しかけられない、意図的にコミュニケーションを遮断するなど、職場での「孤立」を強いる行為です。
④ 業務上不要なことの強制や妨害、過大な要求
明らかに達成不可能な目標を押しつけたり、本来の業務と関係のない作業をやらせたりすること。また、仕事の妨害行為もこれに含まれます。
⑤ 過小な要求や業務からの排除
正当な理由なく、経験や能力とかけ離れた単純作業しか与えない、あるいは業務を完全に与えないことで、働く意欲を奪う行為です。
⑥ 私的なことへの過度な立ち入り
家族構成、交際関係、プライベートな行動に対し執拗に干渉するなど、私生活に立ち入ることもハラスメントとなります。

■ パワハラ対策導入のための7つの手順
ハラスメントの予防・解決には、企業としての「仕組みづくり」が欠かせません。厚生労働省のガイドラインに基づき、以下の7つのステップで社内対策を進めましょう。
- トップのメッセージを明確にする
まず必要なのは、組織のトップが「パワハラは許さない」と明言することです。社長・経営層からの明確なメッセージは、社内全体への強い意識づけとなります。これは、制度や規則の整備よりも先に行うべき最初の一歩です。 - 明確なルールを定める
次に、就業規則や社内規程にパワハラに関するルールを明文化しましょう。例えば、懲戒処分の対象となる行為の具体例や、相談時のフローなどを定めておくと、被害者・加害者双方の対応が円滑になります。また、労使協定やハラスメント防止ガイドラインを策定することも有効です。 - 職場の実態を把握する
社内の雰囲気を把握するには、従業員アンケートなどによる実態調査が効果的です。無記名で実施することで、自由な意見を集めやすくなります。「なんとなくモヤモヤしている」状況も、数値化することで課題として認識できるようになります。 - 社員教育・研修を行う
パワハラを「知らずにやってしまう」ケースも多いため、全社員に向けた研修が重要です。特に管理職には、部下への指導とハラスメントの線引きを理解してもらう必要があります。ケーススタディ形式の研修など、実践的な内容が効果的です。 - 周知・啓発を徹底する
ルールや取り組みを策定しても、社員に知られていなければ意味がありません。社内報、掲示物、イントラネットなどを活用して、定期的な情報発信を行いましょう。社内ポスターやスローガンも、心理的な効果を発揮します。 - 相談・解決の場を設ける
社員が安心して相談できる窓口の設置が不可欠です。社内に設ける場合は担当者の守秘義務や中立性を明確にし、外部専門家と連携することで客観性の高い対応が可能になります。また、相談から解決までのフローをあらかじめ整理しておきましょう。 - 再発防止策を講じる
一度ハラスメントが発生した場合、再発防止のための具体的な対応が必要です。行為者に対して研修を実施したり、職場全体のコミュニケーション改善策を講じたりすることで、風土改革へとつなげていくことができます。

■ まとめ:ハラスメント防止は経営の“信頼資産”です
パワハラ防止対策は、単なるコンプライアンス対応にとどまりません。社員が安心して働ける職場は、人材定着率や生産性の向上、企業ブランドの向上にも直結します。
つまり、ハラスメント対策は「企業の信頼資産」を築く重要な経営施策です。経営者や人事の皆さまが、率先して取り組む姿勢を見せることで、職場は必ず変わります。
もし今、取り組みがまだ不十分と感じたら、まずは「トップメッセージ」から始めてみてください。それが、すべての出発点になります。
もし、ハラスメント防止が必要と感じたときはお問い合わせください。
外部のコンプライアンス機関として、御社にオンライン相談を設置することも可能です。